「なかよしきょうだい」ジャータカえほん
出版 財団法人 鈴木学術財団
え 安 泰
ぶん 石森延男
この絵本の裏表紙には次のように書いてあります。
「なかよしきょうだい」について
仲の良い兄弟がちょうっとしたことでけんかをしてしまいました。
大切なお父さんとお母さんに、珍しいことは珍しいけれどまだよく熟していない果物をあげた弟を兄さんが叱って、弟は家を出されました。
この物語(南伝大蔵経第五三二ソーナ・ナンダ仙本生)で目に立つのは弟と兄との考え方の違いです。
普通には、弟がしたことは悪い心からではなかったというように考えるでしょう。
お父さんやお母さんにおいしいものを食べさせてあげたい、兄さんにゆるして貰って家に帰りたい、そう思う一心が、実際には未熟な果物をあげたり、人々を戦争に巻きこむことになってしまったというのです。
でも、これは、心と行ないがくいちがうのではなく、すでに心にこれらの行いを生み出すものがあったとも考えられます。
だから弟が兄さんに叱られるのは、いつもその考え方がいけないので、自分によいと思われる果物を両親にあげたり、自分だけのために戦争をおこしたりするその考えのいたらなさをたしなめられたのでした。
思いもかけないのに、両親の健康を害してしまったり、国と国との間に戦争をひきおこしてしまうということも本当に恐ろしいことだと思います。
でもけものの皮を楯がわりにつかうほどの智慧のある弟です。
兄のいましめが見にしみて、やがて人間同志の心の正しいつながりを知るようになることでしょう。