「たいようとがちょう」ジャータカえほん
出版 財団法人 鈴木学術財団
ぶん 友松あきみち
え 初山 滋
この絵本の裏表紙には次のように書いてあります。
「たいようとがちょう」について
「いのち」の問題は子供たちにはむずかしいかもしれません。
私たちにとっても本当に不思議なもの、それが「いのち」です。
ただ、ものみなのいのちが早く過ぎていくものだということ、いのちが失われやすく、思いがけずにはかないものだということは日常の実感です。
子供たちの心にもいつかはその問題が芽生えてくるにちがいありません。
この「たいようとがちょう」(南伝大蔵経第四七六敏捷鵞本生)では、今すぐにそれが子供たちの心をとらえるものかどうかはわかりません。
ただ、幼い心に聞いた真理のことばは、成長した後にもどこか心のすみに生きつづけ、かすかなこだまのように響きをかえしてくることもあるのではないでしょうか。
宇宙時代の子供たちには太陽をおいかける話もごくあたりまえに受け取られると思います。
ギリシャ神話の空を飛んで太陽に近すぎたためついらく(墜落)したイカルスの物語のように、太陽は神話時代には強い力の象徴であり、畏敬の対象でありました。
古いインドの民話の中に、早さの象徴である太陽よりももっと早くいのちが過ぎ去っていく、と説いた物語があるということは、当時の人々の想像力の豊かさを偲ばせると共に、いのちあるものもみな急速に過ぎゆくことを逃れられないという鋭い洞察力に対するおどろきをも呼びおこしてくれます。