「コーサーラのおうじ」ジャータカえほん
出版 財団法人 鈴木学術財団
え 佐藤忠良
ぶん 大類 純
この絵本は「財団法人 鈴木学術財団」が出版した「ジャータカ」を主題にした絵本の中の一冊です。
「ジャータカ」とはお釈迦様の生まれる前(前世)のお話で、「本生譚」「本生話」などといわれます。
お釈迦様が悟りを開かれ、インド各地で教えを説き、多くの人々を救ったのは、この世に生まれる前(前世)で数多くの善行を積んできたから偉大な仏陀となったとされ、その前世の物語が後に多く語られるようになった。
このジャータカ絵本「コーサーラのおうじ」は佐藤忠良が絵を描き、文章は大類純が作成したものです。
この物語の主題は「Hatred ceases not by hatred ,but by love 」、すなはち「憎しみは憎しみによって消え去るものではなく、ただ愛によって止む。」、あるいは「怨みに報いるに怨みを以てしたならば怨みの息むことがない。怨みを捨ててこそ息む。」と訳されるお釈迦様の教えです。
この絵本では11頁、12頁に次のように書かれています。
「うらみをもって
うらみにむくいたならば、
おたがいに いつまでも
うらみは
きえてしまうことがない。
うらみをもたないことだけが
うらみをすてる
ただひとつの みちです」
この教えは昭和26年(1951年)第二次世界大戦後、アメリカのサンフランシスコで敗戦国の日本の処置が話し合われたとき、会議の冒頭でセイロンのジャヤワルダナ氏が演説で釈尊の法句経のこの言葉を引用し対日賠償請求権の放棄を宣言し、そのことにより戦勝国が同調し、日本は厳しい制裁処置を受けることなく戦後処理が進んだのです。
このことは人口に膾炙されて久しい。