北澤楽天「時事漫画」①

時事漫画・北澤楽天-1
時事漫画・北澤楽天-1
時事漫画・北澤楽天-2
時事漫画・北澤楽天-2

北澤楽天「時事漫画」①

 

北澤楽天「楽天全集」②で「楽天全集」を編集するに当たり、『印刷物からの複寫では到底優秀な原版は作り得ないから、殆ど全部を手寫することになつたので、豫期以上煩瑣な仕事になつてしまつた。』と北澤楽天と語っている。

 

「時事漫画」は当初「時事新報」の中での漫画特集だったが、大正10年に日曜別冊版新聞として独立して発行するようになる。

「楽天全集」には「時事漫画」からも多くの紙面が掲載されている。


ここに当時の実物の「時事漫画」を載せる。


この「時事漫画」の画像と「楽天全集」の画像(「時事漫画・北澤楽天-2」の左と右)とを比べて見ると、その違いがよく分かる。
同じ「アインスタイン博士とある夫婦」の画像であるが、微妙に画と色の違いがある。
一つ一つの画像を書き直し、印刷し直すとすれば、その時間・労力・版作りなどには多大な手間がかかる。
この「楽天全集」を発行するのに時間も金銭も思いの外かかってしまったことが、「楽天全集」発刊を途中で止めた一因であろうか。

 

「時事漫画」で「Einsteinアインシュタイン」は「アインスタイン」となっている。
相対性理論のノーベル物理学賞受賞者であるアインシュタイン博士は当初、大正11年9月中に来日する予定であった。
しかし延期となり、実際に日本に滞在したのは大正11年(1922年)11月17日から12月29日までの43日間である。
尚、ノーベル賞の受賞発表は来日途中の航海上で電報を受けたと云う。

 

アインシュタイン博士の来日予定は既に日本で発表されていたのであろう。
この「時事漫画」の発行は「大正十一年九月十七日」付けである。

 

「時事漫画」での「夫婦の会話」は次の如くである。

 

「アインスタインの相對性ツて何?」

寝臺車の中で妻君が質問すると亭主は當惑顔で

「マア宇宙間の絶對的ツて奴を破つて相對的だといふのさ假令(假へ)ば光線も絶對的直線ではない運動も静止も相對的で僕等は静止しているやうだがこの汽車が駛つてるから絶對的静止ぢやない、寝て居ても一秒に三十基米(キロメートル)の速度で地球と共に廻轉して居るのさ、上下の觀念も絶對的ではない、僕が寝臺の上の棚に寝てるとお前が見て上だと思ふ棚も僕からは下にある譯だ」

「それぢやつまり貴方の物は私の物で絶對的に貴方の物ではない、總て相對的だと云ふ譯ね、私アインスタインの説は大賛成よ」