七つのほしのものがたり・佐藤忠良 画
七つのほしのものがたり
キング-おはなしえほん傑作選 33
文・西本鶏介
絵・佐藤忠良
昭和53年(1978)12月 株式会社 フレーベル館 発行
「人間愛の極地を描いた民話」 西本鶏介
これはロシアに伝わる民話です。
夜空にひしゃくの形にならぶ七つの星───北斗七星に托して、少女の愛の心を描いています。
きびしい自然と闘う農民たちの願いが結晶したような美しいお話です。
いうまでもなく、すべての生き物は水なくして生きられません。
水は神が与えてくれる最も大切な恵みです。
それに対して旱魃(かんばつ)は人間に対する自然の怒りであり、神による制裁と、昔の人たちは考えていました。
そして、それは生きとし生けるものすべてを、極限の世界に追い込んでしまいます。
しかし、人間にとってまことの愛は、そうした修羅場においてこそ問われることになります。
少女は自分が飲みたくてたまらない水を必死にがまんして、母親に飲ませようとします。
それはもはや人間を越えた愛の極致であり、神そのものの心といってよいでしょう。
当り前の人間には決して真似ることのできない行為であるが故に、木のひしゃくは銀から金へと変わり、どこにもないはずの水が与えられます。
少女の献身的な隣人への愛が、神の心を動かし、村人たちまでを救うことになったのです。
こうした民話によって、神への信仰心を育て、その愛にこたえる生活をしようと努力した農民たちの素朴な思いを知ることができます。
なお、お話の最後は、北斗七星がどうして生まれたか、そのいわれ話になっています。