白いとんねる・佐藤忠良 画
「白いとんねる」
杉みき子 著
佐藤忠良 画
昭和52年(1977)10月初版第一刷 株式会社 偕成社 発行
はじめに
白くて 長い とんねるがある。
このとんねるを くぐり くぐり、
子どもは いつか おとなになる。
おとなは 子どもに かえれないけれど、
とんねるは いつも そこにある。
なくしてしまった ビー玉をさがして、
むかしの わたしに 会いにいこう。
〈時〉という名の とんねるのむこうへ。
白いとんねる/もくじ
加代の四季 ─── 1
春 かたぐるま 祭 祭のあと 雪屋さん すいか 夕立 夏の夜 ひとりぼっち 秋 秋の海 ほしたふとん 雪 スキー 雪の下 とっくり あたたかい地方 もういちどの春
生きものたち ─── 31
はと おたまじゃくし かえる 蚊 かなちょろ せみ くもの巣 あり ねずみの小屋 犬 ベル からす むくどり たこ
アヤちゃんといっしょ ─── 51
アヤちゃん はずかしい 人ちがい 人まね ジノデキルモミジ サーカス おやつ ささぶね 橋の下 やかん つば 女王さま からす、からす およめさん ひっこし
へんだなあ こまるなあ ─── 77
るすばん 朝の仕事 むす どうして おそうじ あいさつ 夕方 びょうぶ 新しいくつ ぽっくり かざりもの 早寝 おまじない 写真 おちごさん 訪問 育児日記 ひとりっ子
いいことみつけた ─── 105
夜 どろぼう こわい夢 お母さん ゆでたまご ほしぶどう むし歯 こんにゃく 病気 注射 いたい からかみの引き手 戸だな 大そうじ おかせぎで 雨 よける 花だん
学校ゆきかえり ─── 129
一年生 菅井先生 一度め わたし? 春の海 お葬式 夏休みの歌 ラジオ体操 神さま ぬすみ お気に入りの服 レインコート 赤マント青マント おおかみ おかしなおじさん
キコちゃんとあそぼう ─── 157
新しい友だち さくらんぼ 毛虫とみみず ねん土 あそびとくほん 片目とじて ポプラノキイ ニセアカシヤ トマト お化け 屋根の上 石けり 足あと お中元
ふしぎだな ─── 183
たまご屋さん 床屋さん こいのぼり かや 本を買いに マンガ クレヨン 野菜 色水 すみ 細い線路 えんがわの穴 屋根の穴 秋の風鈴 熱 かぜ 口笛 しらが
新しい世界へ ─── 213
うずまき ビー玉 本の味 くろがねのとびら マドリッド 二階 けしの花 流れ星 花火 夜汽車 シグナル ひとまわり 地図 道草 道でない道 川
あとがき ─── 240
むかし、わたしの町では、冬になると、町のなかに雪のとんねるができました。
雪が屋根より高くつもるので、このとんねるをくぐって、通路を横断するのです。
雪のとんねるをのぞきこむと、細長い馬蹄形に区切られた向こう側の家並み一部が、ちょうどスポットライトをあてられたように、あざやかに拡大されて見えました。
そのせいか、とんねるの向こう側の町並みは、いつも見なれている道すじなのに、ふだんとはどこか違っているような感じがしたものです。(中略)
おとなになってからふりかえる、おさないころの記憶というのは、この雪のとんねるを通してながめた世界に、どこか似ているような気がします。
(中略)
わたしは元来ぶしょうもので、短い文章が大好きなものですから、これを書き上げるのは、じつに楽しい作業でした。
楽しんで書いたものが本になるというのは、まったくしあわせなことです。
この本の解説とさし絵のためにお忙しい時間をさいてくださった、関英雄・佐藤忠良両氏と、この本を世に出してくださった偕成社のみなさん、ほんとうにありがとうございました。
一九七七年五月 杉みき子
作者と作品について=関英雄 ─── 242