三人の0点くん・佐藤忠良 挿絵
「三人の0点くん」
著者 岡本良雄
装丁 辻村益朗
さし絵 佐藤忠良
カバーデザイン 工藤強勝
1977年7月1刷 株式会社 偕成社 発行
この本のカバー裏には「●子どもの心の動きを軽快に描いた傑作集。三人の0点をとった者同士が名古屋のテレビ塔の上で偶然出会います。ユーモラスな筆致の表題作ほか、「安治川っ子」「ラクダイ横町」「南へ」「ふくろうチーム敗戦記」など。子どもを描いて定評ある作者の代表作13編を収録」とある。
もくじ
ふくろうチーム敗戦記・・・・・・・7
南へ・・・・・・・・・・・・・・・21
八号館・・・・・・・・・・・・・・39
安治川っ子・・・・・・・・・・・・59
イツモシズカニ・・・・・・・・・・93
ディオゲネスの家・・・・・・・・・119
あすもおかしいか・・・・・・・・・147
ラクダイ横町・・・・・・・・・・・165
太郎と自動車・・・・・・・・・・・183
ふみきり番のせんたじいさん・・・・195
アンクル=トムさん・・・・・・・・201
空中ブランコ・・・・・・・・・・・231
三人の0点くん・・・・・・・・・・237
解説 前川康男・・・・・・・・・270
前川康男の「解説」には次のように書かれている。
「作者について
岡本良雄さんは、大阪生まれの作家です。
『安治川っ子』という童話は、岡本さんが生まれた家のあたり、大阪湾にそそぐ安治川のほとりが舞台になっています。
此花区安治川上通り一丁目という町名です。
もっとも、そこには四歳のときまでしか住んでいませんでした。
なぜかというと、安治川のほとりは工場がたくさん軒を並べていて、煙突から吹きだす煤煙がひどく、『ここでは子どもを育てられない』と、岡本さんのお父上は大阪の天王寺区のほうへ引っ越してしまったのです。(中略)
岡本さんという童話作家は、世の中の動きをじっと見つめ、じっと考えながら物語を書く型の人でした。
これからの世の中はこんなふうであってほしいという夢をいつももって童話を書いていました。
そして、その夢も、実現不可能な空想だけのものではなく、みんなで力を合わせてやればやれそうな夢です。
そういう人でしたから、この『安治川っ子』も、四歳まで住んだふるさとの土地をなつかしむという気持ちだけで書いた童話ではありません。
川べりに住む子どもたちの生活や行動をしっかり見つめて書いています。
岡本さんが世の中の動きをじっと見つめる人だったので、四十年以上むかしの安治川を描いているのに古い感じがしないのではないでしょうか。
いえ、古いどころか、現在わたしたちが困っている公害、川のよごれ、空気のよごれを予言者のように感じとって童話に描いているのです。(後略)」
【 岡本良雄 (おかもとよしお) 】
1913年大阪市に生まれる。早稲田大学国文科卒業。1942年、童話集『朝顔作りの英作』を出版。戦後、日本児童文学者協会創立に参加する。1951年『ラクダイ横丁』他の短編で、児童文学者協会第1回児童文学賞を受賞。1963年没。作品は「岡本良雄童話文学全集」(全3巻)に収められる。