青山俊董老師・著書
この本は青山俊董著「花有情」(主婦の友社発行)である。
とても美しい本で、花の写真と青山俊董老師の言葉が載せてある。
この本の扉内に「花開き花香る 花こぼれなお薫る」と青山俊董老師が自筆で書いてある。
また、「くれないに 命もえんと みどりなす 黒髪断ちて 入りし道かも。」の歌があり、隣は無量寺の写真。
ともに青山俊董著「花有情」(主婦の友社発行)の四頁、五頁に載せてある。
「くれないに 命もえんと みどりなす 黒髪断ちて 入りし道かも。」
これは青山俊董老師(尼僧)の得度の時の歌である。
青山俊董老師は1933年(昭和8年)、愛知県一宮市に生まれた。
その俊董さんが叔母の住職する長野県塩尻市の無量寺に入ったのは、僅か数え五歳の春であった。
娘が叔母に手を引かれて生家を後にするとき、お母さんは悲しくて家に居たたまれず、一日裏の畑に隠れて泣いていたと云う。
その小柄なお母さんは、病弱で寝たっきりの父と、年老いた母との看病をしながら、家計の切り盛りもすべて一身に背負って、鶴のように痩せていた。
しかし、そんなお母さんがいつも思い出すのは、長野の無量寺に入った我が子、我が娘である。
“もう一度だけ、この手で我が子を抱きしめたい”との思いから、お母さんは愛知県一宮から汽車に乗り、八時間かけて長野の無量寺に会いに来たこともあったと云う。
お母さんが亡くなった時、俊董さんが一生かけても着つくせない程の着物が家に残されていた。
さらに出家した我が娘が決して袖を通すことのない、花嫁衣装まで揃えてあった。
蚕を飼い、糸を紡ぎ、出家した娘の晴れ姿を夢みて、お母さんは一人で娘の着物を織っていたのである。
青山俊董尼は15歳で得度した。(その時の歌が上の歌である。)
その後、、愛知専門尼僧堂に入り修行する。
駒澤大学仏教学部、同大学院、曹洞宗教化研修所を経て、昭和39年より愛知専門尼僧堂に勤務する。
昭和51年、愛知専門尼僧堂の堂長となる。
昭和59年より特別尼僧堂堂長および正法寺住職を兼ねる。
平成18年に女性では二人目の仏教伝道功労賞を受賞する。
平成21年には曹洞宗の僧階「大教師」に尼僧として初めて昇任する。
現在は無量寺東堂でもあり、参禅指導・講演・執筆に活躍するほか、茶道・華道の教授でもある。
その青山俊董老師には沢山の著書がある。
一応調べたが調べ尽くせなかったので、ここに載せていない著書もあり、又間違いもあるかも知れない。
青山俊董 著書
1978.10.10. 茶禅閑話-茶の湯十二話 (中山書房仏書林:発行)
1982.3. 天地いっぱいに生きる (曹洞宗宗務庁:発行)
1983.5.10. 美しき人に 禅に生きる尼僧の言葉 (ぱんたか出版:発行)
1986. 法の華鬘抄-法句経を味わう (柏樹社:発行)
1987.4. 今にいのち燃やして―「私」を捨ててどう道を開くか (佼成出版社:発行)
1989.10. 生かされて生かして生きる (春秋社:発行)
1989.10.16. 黒髪たちて入りし道 こころの道しるべ (清林寺講話集2) (清林寺)
1992.5. 道を求めて (主婦の友社:発行)
1992.3.20. 松籟に聴く 禅の道 茶の道 (柏樹社:発行)
1994.5. 禅の知恵-『正法眼藏随聞記』に学ぶ ひろさちや共著 (鈴木出版:発行)
1994.10. 道元禅師・典座教訓 すずやかに生きる (大蔵出版:発行)
1995.9.1. 『典座教訓』講話 (柏樹社:発行)
1996.5.30. 禅のまなざし (鈴木出版:発行)
1997.9. もう一人の私への旅 (彌生書房:発行)
1997.5.1. 花有情 (主婦の友社:発行)
1998. 禅のまなざし (すずき出版:発行)
1998.11. 道はるかなりとも (佼成出版社:発行)
1999.10.20. 仏のいのちを生死する (春秋社:発行)
2000.2.25. 悲しみはあした花咲く-青山俊董「摂心日めくり法話」(光文社:発行)
2000.3.15. 照らされて知る我が姿 (鴻盟社:発行)
2001.3.30. 心の道しるべ-法句経を味わう (彌生書房:発行)
2001.9. わが人生をどう料理するか 上-「典座教訓」に参ずる (春秋社:発行)
2001.10. わが人生をどう料理するか 下-「典座教訓」に参ずる (春秋社:発行)
2002.11. 般若心経ものがたり (彌生書房:発行)
2003.3. 典座教訓をよむ 上―道元に学ぶ人生 (NHKシリーズ NHK宗教の時間)
2003.8.25. 禅のことばに生き方を学ぶ (春秋社:発行)
2003.9. 典座教訓をよむ 下―道元に学ぶ人生 (NHKシリーズ NHK宗教の時間)
2003.10.5. 心の故郷からのお便り (市民タイムス:発行)
2003. 禅のことばに生き方を学ぶ (春秋社:発行)
2004.9.1. 新・美しき人に-禅に生きる尼僧の言葉 (ぱんたか出版:発行)
2005. 人生に山水あり道心あり-「いろはがるた」に生き方を学ぶ-(鴻盟社:発行)
2006.1.10. 道元禅師・今を生きることば (大法輪閣:発行)
2006.10.20. あなたに贈る ことばの花束 (春秋社:発行)
2006.10. 花有情 (春秋社:発行)
2007.12. 茶禅閑話―松籟に聴く (仏教書林中山書房:発行)
2008. 禅といま (春秋社:発行)
2008.12.8. 光を伝えた人々-従容録ものがたり (春秋社:発行)
2009.11. 光に導かれて 従容録ものがたりⅡ (春秋社:発行)
2010.6.10. 法(のり)の華鬘抄-法句経を味わう (大法輪閣; 新訂版)
2010.9. 一度きりの人生だから-もう一人の私への旅 (海竜社:発行)
2011.9.3. あなたなら、やれる-禅のまなざし (海竜社:発行)
2011.10.14. 光のなかを歩む-従容録ものがたりⅢ (春秋社:発行)
2013.12.6. 今、ここから始めよう (海竜社:発行)
2014.12. 手放せば仏 「従容録」にまなぶ (春秋社:発行)
2015.12.10. くれないに命輝く 禅に照らされて (春秋社:発行)
尚、青山俊董老師が自筆で書いてある「花開き花香る 花こぼれなお薫る」は、「花有情」の本の十二頁に次のようにある。
「花開き花香る 花こぼれなお薫る
これは数々の名作をのこし、飛行機事故で惜しくも散った向田邦子さんの墓碑に刻まれた、森繁久弥さんの追悼歌である。『花ひらき、花香る』花は数多くあるけれど、『花こぼれ、なお香る』花は少ない。(中略)暮れなずむ春の夕日の中に薫るれんぎょうを見つめながら思う。『花こぼれ、なお香る』、そんな人生でありたいと。」