笹戸千津子・女1996・旭川市永隆橋
「女」1996 笹戸千津子
この彫像は旭川市永隆橋の中央付近にある。
先の「微風」と対照して設置されている。
「微風」は女性が立っているのに対して、この「女」は座っている。
それも極端に身をよじらせている。
何か悩んでいるかのようである。
「微風」は希望に満ちあふれているが、「女」は雌伏している。
「女」と題してあるので、女性であるが故の悩みがあるのかも知れない。
「微風」はより大きく見えるが、「女」はより小さく見える。
「笹戸千津子」 佐藤忠良 (先回「笹戸千津子・微風1996・旭川市永隆橋」より続く)
「習いごとは枠に入って枠を出よ」という古い言葉がよぎり、その都度、吾が外れ枠の責の重たさに今更の思いをさせられ、一人の若い彫刻家を傍にしながら、半世紀余の自分の彫刻生活で深い探りに手の届かぬ不甲斐なさの自問ばかりが続いていた。
しかし、本人自身は気がついていないかもしれないが、このごろの彼女の作品たちは静かながら笹戸千津子の確かな語りかけをしてみせ始めている。
今日も笹戸はモデルと作品の狹(はざま)で終りの無い苦斗(くと)が続いているようだ。
厳しい自然はこちらの都合のいい姿は決して易易と見せてくれないことを思い知らされているに違いない。
コツコツ姿勢と相俟って、笹戸千津子はこのアトリエでの生活の中で、卑しさの片隣をも見せずに来たが、折り返し点もなく、ゴールも見えない長い長い彫刻の道を、これからも彼女はきっと、走りもせず、停りもせず歩き続けてくれることであろう。
河北新報創刊95周年記念 1992 「笹戸千津子展」図録より