優佳良織工芸館
優佳良織工芸館・開館記念(記念誌より)
「記念碑的な偉容に息をのむ」 佐藤忠良
峠から旭川の全貌の見えるこの優佳良織工芸館に立つと、東京から飛んできた私は深呼吸がしたくなります。
しかし、それにもまして、逆に市内から此処へ近付くと、彫刻家の私は、丘をテーマにしたこの建物の記念碑的な偉容に息をのむ思いがするのです。
下手をすると童話の家の様に可愛らしく小さくまとまってしまいそうなアイディアを、設計者は逆手にとって、あの塔で強く語らせたのは流石でした。
中央ホールの両壁面に織女と牡牛を主題にしたレリーフでお祝いにしようとした私は、優佳良の顔になるかもしれないシンボルマークにまで手を出してしまいました。
大変重いものを背負ってしまったものだと思いながらも、片方では結構楽しませてもらい、あれやこらやと種々試みたあげく、とうとう羊の角になってしまいました。
やがて、この角たちは美しい糸を引いて日本中をかけめぐり海を渡ってくれるであろうことを思い、私はちょっと愉快になります。
いい歳をして、何の苦労もなしに、この丘の上に突然素晴らしい民芸館が出来てしまったような錯覚をおこし、白い雪の日に、新芽の春の日に、赤レンガの塔にこのマークのついたプールほどの大きな旗をなびかせようかなどと夢想すると、又ちょっと愉快になるのです。
その上を、アンリ・ルッソーの絵に出てくる飛行船が飛び、シャガールの新婚夫婦が飛んでくれればもっといいのです。
みんなで大変な御苦労だったにちがいないのですが、そんな風な樣子をちっともみせていないのが気に入りました。
(彫刻家) (記念誌28頁)
この優佳良織工芸館が建った後、さらに国際染織美術館、雪の美術館が建設された。
1980 昭和55年 優佳良織工芸館・開館
1986 昭和61年 国際染織美術館・開館
1991 平成 3年 雪の美術館・開館
尚、雪の美術館前庭の横の木々の間から、わずかに旭川市市街が見える。